「生」のマグロ その2

今回は「生」のマグロ その2です。
日本近海の本鮪の「旋網漁」についてお話したいと思います。

前回、私がこれだけは止めて欲しいと主張したのは、
①「ヨコワ」と呼ばれる本鮪の幼魚
②産卵前の、卵をたっぷり蓄えた本鮪の親魚これらを旋網で根こそぎ一網打尽にしてしまう事です。

①本鮪の幼魚であるヨコワは、そのまま大きくなって数年後また日本近海に戻ってきます。
②親魚が無事に産卵してくれれば、卵は成長してヨコワになり、更に生育してまた親魚になります。

日本近海の本鮪の資源が回復しないのは、「大型船による本鮪の旋網漁」に全く規制がない事に一因があるのは、かなり明白な事実だと思います。

一例ですが、弊社のある静岡県静岡市の清水港ではウチの社長が新人時代には(今から40年以上も前です)
セリ場を埋め尽くす位、大量の「生の本鮪」が「旋網漁」によって水揚げされていたというのです。
現在の清水港は大型コンテナ船が行き交う、国際貿易港となりマグロの水揚げも冷凍運搬船による「冷凍マグロ」が主体。
旬の日本近海の生本鮪水揚げは全く有りません。
漁業権や港の施設等受け入れ体制の問題も有り、現在は日本海側の鳥取県境港市が水揚げの基地となっています。

社長曰く、当時本鮪の旋網漁には漁の「解禁日」が有り、ちゃんと産卵期間は禁漁だったとの事です。

現在の「大型船団による本鮪の旋網漁」の問題は産卵期の魚や幼魚まで漁獲している点です。
大型の船で大量に漁獲する為、処理が間に合わず血が飛んだお刺身が店頭に並びます。
値引きしても売れず、廃棄処理されるものも出ます。
明らかに「不の連鎖」が起きていると思います。

私が一番おかしいと思うのは、親魚がお腹に持っていた卵は、そのほとんどが飼料(餌)になっているという点です。
ちゃんと産卵させてあげれば、そのうち幾つかは生存競争を生き残って成魚となって日本近海に戻って来るのです。
そんな「金の卵」を餌にしているのです。
水産行政の無策が問題を引き起こしているのか、行政と受益者達が問題を見ないふりをしているのか、日本の、いや世界的な目で見ても水産資源の管理上の非常に大きな問題だと思います。

写真は6月8日(火)
東京の豊洲市場の生マグロの相場表です。
丸く囲ったのが「旋網漁」の生本鮪です。
鳥取県=境港市が主な漁港です。
今週は関東のスーパーや大手鮮魚専門店ではこの生本鮪が多く並ぶでしょう。
弊社のような業者が取り扱う冷凍マグロは当分出番なしです。

「このままじゃマグロがいなくなるぞ!」
自分の仕事の事だけではなく、マグロという貴重な資源の行く末を考えてますます気が重くなる。
そんな考えに悩まされるのが、自分自身にとっての「魔の6月」なのかもしれません。

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