「中落」と「切り落とし」

まぐろの加工品の中で、ねぎとろと並んで販売が伸びているのが「切り落とし」「中落」と呼ばれる商品です。

ネット検索してみますと、その二つの言葉がほぼ同意語として混同されていると見受けられます。

「切り落とし」とはまぐろの魚肉をスライサーなどで薄く切ったものです。

「中落」とはまぐろを裁断する際、中骨についた魚肉の事です。
写真を見て頂くと良く分かります。
白い中骨の周りに。赤く魚肉が付いています。
この魚肉をスプーンなどですいたものがまぐろの「中落」です。

なので「中落」=「すきみ」は正しい表記だと思います。
写真は冷凍の天然本鮪ですが、中落ちを取るには中骨部分を解凍して取るしかありません。
正確に計測した事は有りませんが、この100kg位の本鮪から取れる中落ちは多分数百グラム、多くて1kg有るかないか位だと思います。

上記の製造過程の違いから明らかなように「切落とし」=「中落」ではありません。
「落」という言葉が両方使われている為、連想ゲームのように二つの品名が繋がり、販売し易いネーミングとして定着したのではと思われます。
メーカーの方でも、消費者が混乱してしまうようなネーミングや商品説明が足りない部分が多いように感じます。
明らかに商品は切り落としなのに、商品説明では中落と表現している事もあります。
「中落風」「すきみ風」等々の表記もあります。

お肉でいえば、
ねぎとろ=ミンチ
切り落とし=切り落としとなります。
あれっ、なんかお肉の表記と共通するなと気づいた方は大正解です!
まぐろの加工品の工場では、その多くが「精肉工場」で使用されている機材を流用しているのです。

ねぎとろの魚肉を混ぜるのは「ミキサー」
切り落としを作るのは「スライサー」
どちらも、スーパーの精肉部門のバックヤードに有る機材です。
これらの大型版が、各まぐろ加工品メーカーの工場で活躍しているのです。

まぐろの「切り落とし」と「中落」スーパーや量販店で販売されている商品はその殆どがまぐろの「スライス」です。

まれに、本当に「中落」が食べられるお店もあります。
そんなお店は、必ず「数量限定」とうたっているはず。
なぜなら、最初にご説明した製造工程により本物の「中落」は決して多くは取れない部位だからです。
それに新鮮でなければ生食は無理です。
生マグロを自分たちで解体販売しているお店なら、提供出来ると思います。

昨年見たニュースでは、豊洲の仲買さんも中落ちの注文が多くて予約待ちだと聞きました。
本物の「中落」、これぞ希少部位です。