もしタイムマシーンがあったら

私も大好きな、80年代のハリウッド映画「バックトゥザフューチャー」みたいに、もしタイムマシーンがあったら、みなさんはどの時代のどこに行きたいですか?
私は主に60〜70年代の音楽ファンです。rock,soul,reggae,jazz等が大好きです。
例えば、名盤の数々が今まさに録音されているスタジオのセッション現場に潜入したい。
The Beatles/Abbey Road
Miles Davis/Kind Of Blue
The Rolling Stones/Sticky Fingers
はっぴいえんど/風街ろまん
Marvin Gaye/What’s Going On
James Brown/Sex Machine
Bob Marley & The Wailers/Live! 等々。
タイトルを上げ始めたらきりがありませんね。
考えただけでワクワクします!
でも音楽は、聴きながら頭の中で想像することが出来ますから実際に現場に行かなくても、聴くたびに録音現場を追体験しているとも言えなくもない。
まぁ、音楽バカの戯言という事でお許しください。

一方で、もしあの時こうしていたらと後悔することも多くないでしょうか?
タイムマシーンがあったら、その時の自分に事前にアドバイスしてあげたいと。
件の映画でも、主人公のマーティが実のお父さんにアドバイスに行く場面が有りますね。
だって、お父さんがお母さんにちゃんとお付き合いを申し込まないと、自分が生まれて来ませんから!だんだんマーティの体が透明人間のように存在が消えそうな描写までありました。

とても芸が細い。
結局はめでたくお付き合いしてハッピーエンドになるのですが現実となると、そうは行かない事の方が多いのではないでしょうか?

ここからは仕事の話になりますが、現在冷凍マグロ業界は非常に厳しい状態に置かれています。

まず昨年はコロナ禍のせいで、年間を通じて魚価(セリ値)は低調でした。
それに嫌気をさした台湾の船主達は、水揚げのコストが回収出来ないと漁に出ない事態に。
日本国内の冷凍マグロ在庫は、徐々に減っていきました。
今年に入り、需要と供給の関係で魚価(セリ値)が回復傾向。
国内の販売状況は未だ回復していないのにもかかわらず、
魚価だけが一人歩きし始めました。
いち早くワクチン接種が進んだヨーロッパやアメリカは、経済活動を再開。
魚価の回復を受け、台湾船が漁を再開しようとするも今度は主な船員供給元たるインドネシアで新型コロナが蔓延。
船員が集まらず、漁が再開出来ない状態に。
日本国内在庫の極端な減少と搬入量激減により、相場が更に高騰。
運悪く旧盆時期と重なり、急激な相場高の事態になっているのが現状です。

しかしほんの数年前、最大手の回転寿司チェーンで
まぐろの赤身が前代未聞の価格で安売りされていた事を
覚えている方はいませんか?
通常2カンで100円のところ、なんと3カンで100円だったのです!

当時延縄船の冷凍キハダマグロの大量搬入が続きました。
相場はガタ落ち。安くしても売れない状態に。
結局、業界最大手が通常はメバチマグロの商圏である関東でもキハダを安売り。
それでも消化出来ず、遂に回転寿司の最大手チェーンにキハダを安売りして上記の通り赤身3カン100円売りに至りました。

その後、理由は不明ですがキハダの搬入量は徐々に減少。
昨年来のコロナ禍の販売不振に突入していきます。
もしあの時、キハダを安売りせずに温存していたら?
きっと今頃一儲け出来ていたかもしれません。
でもなかなかそうは問屋が卸さない。

もしタイムマシーンでその時の自分に会い、数年後の顛末を伝えていたら?
多分、私そんな話は信じなかったと思います。
なぜなら、この冷凍マグロの業界に携わってからというもの同業他社の方々が一攫千金を求めて様々な「仕入れ」という形の投資を行い、その結果、ババを掴まされて倒産や廃業という実例を幾度となく見て来たからです。

自分なりの結論としては、
①「目の前にある現物のマグロ」についての価値観を最優先する
②様々な情報を集め、数ヶ月先迄の相場予測を立てて仕入れ販売に努める
(半年先になると、不確定要素が増える為あえて冒険はしない)

マグロの搬入量が少なくなると、やはり心配になります。
そんな時思い出すのが、弊社の市場での買い付けをお願いしている仲買さんとの会話です。

その方曰く、
「今まで何回もこれからマグロが少なくなるって言われたんだけど、
それでも毎日セリ場にはなんかしらマグロがあるんですよね。
全く一本も並ばないなんて事は無かったですよ。」
とても実感のこもったお言葉です。

一本のマグロ。
まずはそれを大事に販売すること。
市場の方々から、一番大切な事を教わりました。