逆風か、追い風か

写真のマグロは、先日セリで仕入れた天然南鮪です。
重量は44kg。日本船がアフリカ大陸最南端ケープタウンの西沖合で漁獲したものです。
鮮度も良く脂も上々。
久方ぶりに仕入れることが出来た、上物です。

実はここのところ2ヶ月位の間、天然南鮪の上物はセリ値が高騰していて全く手が届きませんでした。
この日のセリでも、1本目のマグロは高値がつきました。
私が仕入れた2本目のマグロと比べると、鮮度・脂共にそれほど大差ないものでしたがキロ当たりなんと600円も高く買われて行きました。
ちなみに私の下付けでは、この2本のマグロの値差はキロ当たり100円から200円位でした。
最初がめちゃくちゃ高いので、次も無理かと思っていたら
運良く想定内の値段でセリ落とす事が出来ました。

ここがセリの面白いところです。
何故だか分かりませんが、ストンと落札出来る時が有るのです。
ごくたまにですが、相場よりかなりお安い時もあります。
だから、セリは絶対に諦めたらダメなんです。
そんな幸運に少しでも多く出会う為に、毎朝早く起きて市場に出向き全てのマグロに下付けしています。
私のセリに対する基本スタンスとしては、欲しい魚には、とりあえず全部やりを出してもらいます。
下手な鉄砲数打ちゃ当たるとは言いますが、とにかくチャレンジしてみないことには始まりません。
チャレンジする事自体はタダですから。
本数が多ければ多いほど、たまたま他にライバルがいないという絶好のチャンスが巡ってくる確率が上がります。

多く買い過ぎて困ったという事は、ほとんど有りません。
それくらいせこく、安めに下付けしていますので。
買えなくて当たり前、もし一本でも引っかかったらラッキー位に思っています。

そんな心持で下付けしていますので、私の代わりにセリに参加してくださる仲買さんには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
いつもセリ人から怒られていますから!
「そんな値段じゃ無理、無理!」と言われています。
なんともお恥ずかしい限りです。

欲しいマグロの値段が高くて買えない事を「逆風」と捉えれば、仕入れ環境が厳しいとも言えますが、自分が買いたいマグロが、他の業者さんからも人気があるという事は商売上の「追い風」だと捉えることも出来ます。

値段が安いという事は、逆を言えば人気が無いという事。
人気が無いマグロより、人気の有るマグロの方が売りやすいですよね。
セリ値が高いという事は、人気が有るマグロだという事ですからそのマグロは売りやすいはずなのです。

私達仕入れに携わる人間は、安く仕入れる事にばかり傾きがちです(特に私)。
仕入れたいマグロの相場が高い場合、なぜ今高いのかその理由を良く考えればおのずと販売の方針も定まります。

昨今の緊急事態宣言下での販売不振と、マグロ原魚の搬入減による相場高騰。
相場の高騰を逆風と捉えるか、追い風と捉えるか。
追い風とまでは行かなくても、値段が安くて人気がないよりはましだと考え、とにかくプラス思考で行くしかないと思っています。