下準備

今回の写真は、先日行った冷凍マグロの加工の際に撮影したものです。
さて一体何をしているのかお分かりになりますか?

答えはカワラ取りする「下準備」です。
「このように切って下さいね」と包丁で事前に線を引いているんです。
冷凍状態のマグロを裁断するには、電動のこぎりを使います。
高速回転で刃が回り、コチコチに凍った状態のマグロでも
1発で切り刻む事が出来ます。
という事は、人間の手や指などは簡単に切れてしまいます。
非常に危険な作業ですから、このようなマグロを「切る」作業は
基本的に加工場の専門の方にお願いしています。
ただこのマグロをどのように切り、製品化していくか
細かく指示を出して伝えるのは、私たち加工をお願いするほうです。
依頼者の指示通りに、加工場の作業員方々が製品作りをしてくれます。
最終段階の製品の箱詰めの工程は必ず立ち会い、品質をチェックします。

今回の「カワラ取り加工」は、冷凍マグロの加工の中でも
最も難易度の高いものの一つです。
なぜなら、写真の通りにマグロを「曲線に切る」作業だからです。
電動のこぎりは上下に高速回転していますから、
マグロをまっすぐに切る事は簡単です。
しかしながらこの「カワラ取り」加工は、マグロの皮に近い部分を
厚さ約5cm位の幅で外側と平行に(瓦状に)切らねばなりません。
その為にはマグロを少しずつ動かしながら、
のこぎりの刃を曲げて切っていかなくてはいけません。
上下にまっすぐ回転しているのこぎりの刃を少し曲げる(湾曲させる)
この作業に熟練度がとても必要なのです。
またマグロの魚体は細長く、頭や尾に向かって細くなっています。
胴体の真ん中のコロ(ブロック)は比較的簡単にカワラ取りが出来ます。
マグロのフシ(ロイン)を、長さ16cmコロ(ブロック)に切っていくと
頭や尾に近い部分は表面部分自体が上下で厚さが違ってきます。
脂が乗っている皮身の部分を上下平行にカワラ取りするのは、
じつは非常に難しいのです。

この写真のような下準備があるおかげで、
カワラ取りするベテランの作業員の方でも
いちいち悩まずにすんなりとカワラ取りが出来るのです。
上手な方にお話を伺うと「見えていない下側の面をイメージするのが大事」
とのことでした。さすがです。
基本的に脂の乗っているマグロしかやらない加工ですので、
「カワラ取り」をやった事がない加工場も有るはずです。
加工技術の差が一番出てくる加工とも言えますね。

でもやっぱりまずは良いマグロで有る事が一番大切です。
いくら技術が良くとも、加工するマグロ自体が良くなければ。
二月に入り、市場にも新しいロットのマグロの入荷が増えてきました。
毎日数本ずつですが、コツコツと良いマグロを仕入れています。