生本鮪

写真は6月15日に静岡市場に上場された日本近海の生本鮪です。
一本80〜90kg位の物が数本です。
入荷本数が少ない為、セリではなく相対取引でした。
魚体のなり(格好、姿形)も良く、脂もうっすらとさしていました。


貼っているシールにありますように、水揚げ漁港は鳥取県の境港です。
境港は近年、生マグロの水揚げ量が格段に増えました。

サバやイワシを獲っている旋網漁船が、夏枯れの水揚げが少ない時期に日本近海に産卵に来た本鮪を旋網で巻いて、ごっそりと漁獲したのが始まりだと言われています。


生まれてからずっと高速で泳ぎ続けるマグロですが、産卵を迎える時期だけは、唯一その動きが止まるそうです。
メスが卵を産卵し、オスが精子をかける。
やがて孵化して、稚魚となり餌を食べながらどんどん生育し数年後、また日本近海の産卵場所にもどってくるのです。

そんな貴重な産卵場所が存在する為、日本近海は世界で数少ない本鮪の好漁場となっています。


さて写真の生本鮪についてですが、表面をよく見ると、漁獲時に網や他のマグロとぶつかり擦れた跡が見受けられます。

90kg位にまで生育していますので、幼魚を漁獲したという事ではないので、ある意味ほっとします。

しかし、産卵時期を迎えお腹に卵を抱えていたかどうかは
残念ながらこの状態ではわかりません。
境港は水揚げ後の作業(痛みやすい、えらとはらわたを抜いて氷を詰める)を行うことが出来る人手と施設がある為、このような旋網船が漁獲した生マグロの水揚げが増えました。

もし水揚げされたマグロがお腹に卵を持っていたら、そこで捌いて、魚粉や魚の餌にするのだそうです。


「産卵時期のマグロは漁獲しない」
そう決めれば、本鮪の資源はすぐに回復するはずなのに。
そんなとても複雑な気持ちになる、この時期の生本鮪の入荷なのです。

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