4月の終わりに、生配信されたノラ・ジョーンズの
ライブ演奏の動画がとても素晴らしかったので
今日はこれについて書きたいと思います。
彼女は私が説明するまでもありませんが、
アメリカの超有名女性シンガーです。
彼女のデビューアルバムが発表されてから
今年はちょうど20周年ということで、
様々な形でアルバムが再発売されています。
当時米国はちょうど9.11の直後でした。
酷いテロの後、傷ついた人々の心を癒すかのように
このアルバムは国内だけで当時一千万枚の
セールスを上げたそうです。
このライブは、その一環でアルバム丸ごと一枚分を
再演するという企画で世界同時配信されました。
正味約1時間20分弱。
あまりに素晴らしい演奏と彼女の歌で、
一気に観てしまいました。
編成はとてもシンプルです。
Norah Jones/歌とピアノ
Bill Frisell/エレキギター(アコギも少し)
Tony Scherr/ウッドベース、アコギ
Brian Blade/ドラムス
普通はジャズコンボだとギターはフルアコでしょうし、
ロックバンドの編成だとベースはエレキです。
ジャズコンボとも、ロックバンドとも少し違う。
このメンツがとにかく最強なんです。
まずはNorahの歌とピアノ。
20年の時を経て、表現力を増した歌声は
でも決して押し付けがましくない。
変わらずの魅惑のハスキーボイスです。
ピアノも細かいフレーズがとても効果的で、
特に高音域の囁くようなタッチが素敵です。
歌いながら、全ての曲でメインの楽器として
ピアノを弾き続けました。
Bill のギターは彼女の曲や歌と相性抜群で
これが初共演なのでしょうか?
そうは思えない位、絶妙のバッキングやソロの
フレーズを至る所で挟んでくれます。
そのエレキギターの音色たるや、まさに
星屑ギター(エイモス・ギャレットのよう)。
数曲弾いたアコギは、ラインではなくマイクで
生音を拾っていました。とても暖かい自然な音です。
そうこの演奏は、
湖の見える丘の上のお城(!)のリビングルームから
全世界に向けて配信されたものです。
このセッティングがまた素晴らしい。
特筆すべきはBrianのドラムです。
昔のジャズドラマーのように、
簡単にフォービートなど刻みません。
シンコペーションの効いたバスドラムの
キック連打をはじめ、彼の独特のタイム感が
曲に絶妙なアクセントをつけています。
また全ての曲をドラムスティックではなく
ブラシで演奏しました。
このブラシの演奏のニュアンスが凄まじく
素晴らしいのです。バスドラムの細かな刻み、
スネアドラムの上を滑らすブラシの音色のニュアンス。
それでいて決して自分のテクニックに溺れる事はありません。
彼女の歌とピアノにあくまで寄り添う形で、
その中で最大限の効果が出るように
自分の技術を曲に織り込んでいます。
間違いなく現代の最高のドラマーの一人だと
個人的に思います。
曲順は前後が逆になり、
一番最後があの大ヒット曲”Don’t Know Why”。
この曲のアレンジが一番原曲と変わっていました。
この20年間、多分どのステージでも
この曲を歌わない日はほとんどなかったでしょう。
それ位、彼女の代表作となっている曲です。
歌い飽きる程歌ってきたからこそ、
もう同じようには歌いたくないのだと想像します。
ファンとはわがままなもので、原曲からあまりに
かけ離れているとちょっと寂しい気もします。
まあ、これが現在の彼女なりの解釈という事で
納得するしかありませんね。
とにかく今は、久しぶりにアルバムを聴き直しています。
機会がありましたら、ぜひ一度聴いてみて下さい。
(最後に動画サイトのURLを貼っておきます)