天然南鮪のトロは格別です

正直言って、以前の私は天然南鮪の美味しさが良く理解出来ていませんでした。
かなり前ですが、回転寿司で出てくる蓄養南鮪のトロを一度食べて「もう絶対にお金を払って食べたくない!」と強く思ったのをキッカケに南鮪に対する印象があまりにも良くなかったのだと思います。

その印象がガラリと変わったのは、市場に天然南鮪の上場本数が増えて、何度も加工し、自分の目で魚の中まで見て、実際に食する経験を積み重ねてきたこの2年くらいの間のことです。
遂に私にも、本当に良く理解出来たんです。
「天然南鮪は本当に美味しい!特にトロは最高!舌の上でとろけて、一番近いのはレーズンバター!」

蓄養鮪を批判しようとは、全く思いません。
現在これだけ大量に流通しているわけですから消費者から支持されているという事ですし、蓄養マグロのおかげでトロが身近なものになりました。
この年末年始も、大手のスーパーや量販店の店頭では生・冷凍を問わず蓄養マグロが沢山並ぶことでしょう。

蓄養マグロの現場の経験は、少しですが私にもあります。
私は以前、地中海沿岸のトルコに約半月駐在し、本鮪を蓄養する生け簀で餌やりも経験しました。
とても静かで、地中海特有の澄んだ深い青い色をした内海に生け簀が造られ本鮪が元気に泳ぎ回っていました。
生け簀の大きさは直径約50メートル位の大きいものでしたが、やはり数日ごとに何本か「死にマグロ」がでます。
マグロは生まれてから死ぬまで一生泳ぎ続けるのですが、大きい生け簀でもたまに網に激突して死んでしまうのです。
専門のダイバーが潜って、死んだマグロを引き上げます。
そのまま捨てるのももったいないと、船上で何度かマグロのお刺身を食べたこともあります。

蓄養マグロの販売は、大手商社と大手の流通が組む
正にビッグビジネスです。
巨大な資本力のある会社が、一気に大量に買い付け、大量に販売していく。
そこではマグロ一本一本の品質など、全く関係ないのです。
だって餌を豊富に与えて、太らせているのですから。
どのマグロだって、差はないのです。(厳密に言うと、あまり餌を与えていないハズレのマグロも存在しますが…)

天然物の魅力は、一本一本全て品質が異なることです。
私達人間と一緒で、それぞれに個性があります。

社長と二人でこの会社をやると決めてから、どうやって商売上で自分達らしさが出せるのか常に考えてきました。

蓄養マグロの良さも認めつつ、でも自分達はあくまでより扱いづらい「天然物」に特化しようと徐々に考えがまとまってきたのです。