珍しいキハダの脂

写真は、先日市場に並んでいた冷凍キハダマグロです。
キハダマグロは、冷凍マグロの中でも非常に流通量の多い魚種の一つです。
赤身が中心のマグロなので、あまり市場のセリには上場されません。
市場のセリは、やっぱり脂「トロ」があってなんぼの世界ですから。
このキハダマグロは「尾切り」という状態で上場されています。
荷主(出荷業者)が自分達で一度尾切り選別を行い、
そこで「脂物」が出たので市場に出荷したという訳です。
赤身が主体のキハダですが、餌の豊富さや海水温等の関係で
漁場によっては脂が絡む事があるのです。
有る意味とても貴重な脂物なので、かなりのお値段で流通しています。
固定ファンが居るマグロとも言えます。

旋網漁法で大量に漁獲されたキハダマグロは、ツナ缶の原料となります。
延縄漁法で漁獲されたキハダマグロは、海の比較的に表層部分を泳ぐ為
主にインド洋や太平洋の熱水漁場でまとまって漁獲されます。
ちなみにメバチマグロはより深い海域を泳いでいる為、
同じ延縄漁船でも「バチが主体」と「キハダ船」と、
漁場と時期により漁獲物の構成が異なります。

キハダの魚肉の色は薄めで、赤というよりピンクや肌色に近いです。
身質はしっかりとして、やや硬めという表現をされる方も居ます。
価格はメバチと比べると、若干お安いので主に加工業者向けに流通しています。

生のキハダマグロというとこれまた別物で、一番有名なのは名古屋市場です。
豊洲市場や静岡市場は、冷凍のメバチマグロの上場数が一番多いです。
豊洲は何と言っても近海物や空輸物の「生」の本鮪・南鮪・メバチマグロが花形です。
静岡市場は冷凍マグロの水揚げ地に隣接するため「冷凍」の南鮪・メバチマグロが主体です。

しかし名古屋市場だけは、生鮮キハダのセリが中心の特殊な市場です。
冷凍マグロをメインに扱う業者からすると、
生マグロを褒めてばかりでは少々困るのですが、やはり正直言って生マグロは美味しいです。
特に近海のキハダやビンチョウの生は、冷凍物とは格段に食味が違います。
野菜や果物もそうですが、お魚もやっぱり旬のものが一番美味しいです。
旬という事は、出回る量も増えて価格も買いやすいものになります。
仕入れの上手なスーパーや量販店は、旬の展開も上手です。
冷凍物は貯蔵の効く反面、旬の提案は苦手です。
生のキハダマグロ、出回っているのを見かけたらぜひ一度お試し下さい。
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